薬による治療と対策について
パーキンソン病に対する特効薬はまだ開発されていないため、運動障害を緩和したり、精神症状を和らげたりする対症療法がメインとなっています。しかし、神経が変性してしまうメカニズムがわかってくるにつれて、進行を遅らせる治療が薬物療法によって試みられたり、神経そのものを再生させる遺伝子治療も始められるようになりました。薬物療法は、主に9種類に分けることができます。
9種類の薬物療法
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ドーパミン補充療法
L-ドーパを投与し、ドーパミンを生成させ、症状を改善させる
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抗コリン薬投与
最も古くから使用されており、少量から開始できる
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ドーパミン放出促進薬投与
もともとインフルエンザ治療薬として開発されたが、運動症状が大幅に改善されることがわかるため使われるようになった
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ドーパミン受容体刺激薬投与
認知症の副作用が少ないという利点が大きく、継続して服用する場合に推奨される
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ドーパミン分解抑制薬投与
MAO-B阻害薬として知られ、ドーパミンの濃度を高める
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COMT阻害薬投与
ドーパミンの代謝経路の酵素を阻害し、L-ドーパが分解を抑制しより活動させる
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ノルアドレナリン作動薬投与
すくみ足や姿勢を維持できなくなった場合に有効
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抗ヒスタミン薬
振戦の大幅な緩和に役立つとともに、鎮静作用が多く強く不眠解消にも効果がある
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非動症状に対する各治療薬投
自律神経症状や精神症状それぞれに対する方法
それぞれに対し、やはり副作用の可能性もあれば、継続しないと効果のないもの、逆に急にやめてしまうと死の危険性があるものなど、様々な特徴があります。服用する上で、しっかりその薬の特性を生かさないと、大きな失敗を招いてしまいます。
主な副作用としては、胸やけや食欲不振などの消化器症状、幻覚や妄想を引き起こす精神症状、便秘や尿閉、起立性低貧血を起こす自律神経症状、不随意運動、睡眠発作があげられます。何かが起きてからでは取り返しのつかないことになってしまうものが多くあるので、副作用が出たら主治医に即座に相談する必要があります。
将来の遺伝子研究
そして近年、薬だけでなく、遺伝子治療が大きく飛躍してきました。これがさらに発展していけば、直接神経そのものを再生させるために、ドーパミン作動性神経細胞を脳に移植したり、無毒性のウイルスを利用し、ドーパミン遺伝子を脳に取り込んでもらい、再びドーパミンを作り出せる体へと変えていく遺伝子治療も、夢ではなくなるかもしれません。 病気のメカニズムの解明とともに、治療法もどんどん新しいものへと変わっていきます。日本でも外国でも、様々な研究がなされ、少しずつパーキンソン病特効薬開発の道が開かれてきています。今一度パーキンソン病への理解を深めていくことが、今私たちにできる最善の策なのではないでしょうか。